The Crow : クロウ〜飛翔伝説

1993年製作 1994年公開 主演 ブランドン・リー

 
<作品を覆う悲しみ>
"The Crow " に満ちているもの。
それは胸に突き刺さってくるような悲しみと痛みです。
恋人のシェリーとともに殺されたエリックは、カラスに導かれて蘇り、激しい怒りとともに犯人たちに復讐していきます。

因果応報を絵に描いたような復讐劇。
そう言ってしまうのは簡単ですが、でもそれは「復讐」なのでしょうか。

ブランドンは語っています。
「これは・・・・被害者の正義だよ。」
現実の世界では果たすことのできない、被害者の正義。
たとえそれを果たしても、決して戻ることのない、命、未来、幸福。
だからこそ、どんなに激しい怒りの描写があっても、後に残るのは深い悲しみの余韻です。

<壮絶さ>
見るたびに感じる「壮絶さ」。
それは復讐の場面だけではなく、ブランドンの演技と、作品全体から圧倒的な力で迫ってくるものです。
全身全霊で演じるというのはこのことなんだ、と思わずにはいられない演技。
エリックとブランドンの境がどこにあるのかわからなくなってきます。

不死身であるかのようだったエリックも、最後には傷つき、疲れ果ててぼろぼろになります。
ラストシーンの透き通るような美しさを見て、ほんの少し救われた気持ちになります。

<光と闇>
映像を観ていて感じることの一つは、「闇があってこその光」ということです。
夜の闇、カラスの黒、主人公の髪と服も黒、モノトーンの建物・・・・と、
色彩はほとんど感じられず、鮮やかな色は記憶の中だけにあるかのようです。
全体として暗い映像が多いのですが、
その分、わずかな光が照らし出す光景はとても美しいです。

<場面の美しさ>
内容も大好きですが、映像と音楽がどの場面もものすごくかっこいいです。
場面一つ一つが「絵になる」のです。
ゴシック調の夜の街、雷に打たれたように記憶がよみがえる場面、幸福感に彩られた回想、犯人を追いつめる鬼気迫る場面、などなど。
銃撃シーンも、もともとはあまり好きではないのですが、この作品は別格です。
大勢の悪党たちを次々に倒していくブランドンの激しいアクション、
銃声と閃光、強烈なロックがぴたりとはまって、ぞくぞくするほどです。

<かけがえのなさ>
"Believe me, nothing is trivia." ・・・・ Eric Draven
映画の中でエリックが口にした言葉。
「つまらないことなんてないんだ。」
生きている瞬間瞬間がかけがえのない、大切なものなんだ、と彼は気づくのです。
毎日を、自分は大切にしているだろうか? 

<数々の対>
生と死、喜びと悲しみ、希望と絶望、怒りと空しさ、光と闇、罪と罰。
内容的にも、映像的にも、対を成すものがたくさん感じられます。
見終わったあと、心の深いところに何かを投げ込まれたような気持ちになります。


ブランドンの最後の作品は、今見ても全く色あせることがありません。
見るたびに新たな発見があります。
これからもずっと、大好きな映画であり続けると思います。